朋友クリニック

物忘れ

物忘れ

誰しも物忘れの経験はあると思いますが、20歳を過ぎると徐々に記憶力が低下してきますので、年齢を重ね忘れっぽくなるのは特別なことではありません。しかし、その『生理的な老化』に対し、脳の可逆的あるいは不可逆的障害が時間経過とともに進行し、認知症状を呈する病態を認知症といいます。認知症状には、記憶力障害、見当識障害、計算力障害、思考力障害、感情障害、異常行動などが挙げられます。こちらでは『危険な物忘れ』の分類・特徴を述べたいと思います。

アルツハイマー型認知症

認知症の代名詞となりつつある『アルツハイマー型認知症』は、認知症全体の約50%を占めるといわれ、さらに増加の一途をたどっています。原因は、脳全般に『βアミロイド蛋白』という異常な蛋白質が蓄積し、脳の神経細胞が変性・脱落することで脳の萎縮が進行するといわれており、加齢や家族性に加え、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣の乱れが発症を誘発するといわれています。一旦発症し認知症状が進行してくると、意思疎通も困難となり、最終的には寝たきりになります。診断は、物忘れテスト(MMSEやHDS-Rなど)やMRI(側頭葉内側海馬の萎縮)、SPECT/PET(側頭葉・頭頂葉の血流低下や糖代謝低下)などを参考に総合的に評価します。

このように発症要因の究明や診断技術は進歩していますが、いまだ根治的な薬剤は開発されておりません。治療としては、認知症状の進行を遅らせる薬剤や周辺症状(幻覚・妄想・うつ症状・徘徊・興奮など)には対症療法で対応しているのが現状です。

脳血管性認知症

脳卒中により脳組織がダメージを受け認知症状を呈する病態で、認知症全体の約20%を占めるといわれ、脳血管障害の後遺症といえます。突然の脳卒中後に急激に発症する場合と、小さな脳梗塞を繰り返す度に徐々に進行する場合があります。根本的な治療法はなく、脳血流改善薬や脳代謝賦活薬などが比較的有用であるといわれています。

レビー小体型認知症

パーキンソン病で中脳の神経細胞内に蓄積する『レビー小体』という異常な蛋白質が、大脳皮質の神経細胞内に蓄積する病態で、認知症全体の約20%を占めるといわれています。認知症状に加え、特徴的な症状として幻覚や妄想、うつ症状といった精神症状とパーキンソン病様の運動機能障害、起立性低血圧や尿失禁などの自律神経症状があります。比較的早く進行し、アルツハイマー型認知症に比べ10倍も寝たきりになるのが早いといわれています。根本的な治療法はなく、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病の治療薬で対症療法が行われます。

前頭側頭型認知症

『Pick球(従来のPick病)』や『TDP-43』という異常蛋白質が脳の神経細胞に蓄積することにより前頭葉と側頭葉が萎縮し、人格変化や意欲低下などの前頭葉症状と、言語障害などの側頭葉症状が認知症状より顕著に現れてきます。根本的な治療法はまだ確立されておりません。

慢性硬膜下血腫

高齢者や大酒飲みで元々脳の萎縮があり、軽い頭部の打撲などが原因で脳の表面の細い血管が破綻し、徐々に血腫が貯留することで脳が圧迫され、外傷後約1ヶ月(2週間~3ヶ月)を経て認知症状や頭痛、手足のまひやしびれ、ろれつがまわらないなどの症状で発症します。溜まった血腫を手術で取り除けば認知症状は改善されます。

正常圧水頭症

脳や脊髄の周りを循環している脳脊髄液の循環・吸収のバランスが崩れ、『脳室』という脳脊髄液の貯蔵庫が満杯になることで脳を圧迫し、認知症状や歩行障害、尿失禁といった三主徴が現れてきます。原因不明の『特発性』と、クモ膜下出血や脳出血、頭部外傷、髄膜炎などが原因による『続発性』があり、脳室に溜まった脳脊髄液を排出するチューブを埋め込む手術(シャント術)により、三主徴は改善されます。

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